はじめに ─ 現代を生きるための“両義性”
私たちの毎日は、安定を求める気持ちと、変化を受け入れる必要のあいだで揺れ続けています。
生命の視点に立てば、「安全で驚きの少ない世界」(安定)と、「未知から学びを得る世界」(変化)の両方が、生き延びるために欠かせません。
その二つを同時に抱え、歩を進める姿勢――それがAPLFにおける「原則1:矛盾を抱いて進む」です。
原則の核心 ─ 定義と要点
- 矛盾やゆらぎを排除しない。 白黒を急がず、濃淡(グラデーション)を見ます。
 - 「どちらか」ではなく「どちらも」。 安定と変化、計画と偶然、直感と論理を併置します。
 - 判断の軸は“自分の律”。 揺れの中心に戻れる基準(価値観・習慣)を育てます。
 
短く言えば、矛盾を抱えたまま前に進む力です。完全な整合を待つのではなく、歩みの中で整えていきます。
いま起きている矛盾の例
- スピードを求められながら、丁寧な関係づくりも必要。
 - 遠隔でつながりつつ、身体の感覚を失いやすい。
 - 合理を重んじながら、遊びや余白からしか生まれない価値もある。
 
これらは「どちらが正しいか」ではなく、行き来しながら適切な“間”を探るテーマです。
実践 ─ 日常に落とすための手がかり
1)ミクロ:1日の中で“行き来”をつくる
- 深く集中する時間と、意図的に解放する時間(散歩・伸び・無目的)をセットで計画する。
 - 意思決定では、「100%信じ、100%疑う」の両視点で一度だけ見直す。
 
2)メゾ:基準(律)と環境(整え)を育てる
- 価値観・行動基準・禁止事項よりも「こう在りたい」を短文で言語化しておく。
 - 光・音・香り・姿勢など、戻れる環境のスイッチを用意する(お気に入りのノート、音楽、椅子など)。
 
3)マクロ:矛盾を設計に織り込む
- プロジェクトに「検証と余白」を最初から組み込む(例:2週間に1回の再設計タイム)。
 - 関係づくりは、オンライン×オフラインの二層で。どちらにも偏らない。
 
この原則の代表タグ
キーワードで読むこの原則
- #中庸(chuuou):揺れの中心に静けさを保ち、振り切らない。
 - #ゆらぎ(yuragi):静と動のあいだにある生命のリズムを感じる。
 - #信じて疑う(believe_and_doubt):100%信じ、同時に100%疑う視点を持つ。
 - #両立(both_and):「どちらか」ではなく「どちらも」を抱える設計思考。
 - #グラデーション(gradation):白黒ではなく、濃淡で世界を見る感性。
 
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