APLFには、日常を整え、豊かに生きるための6つの断面と、
その土台となる7つの共通原則がある。
これらは、暮らしや働き方にすぐに触れる“行動と言葉”として機能している。
そのさらに下には、これらすべてを静かに支えている
“もうひとつの層”が存在する。
それは、生命、関係性、矛盾、時間、身体、存在といった、
生きる前提そのものが息づく、深い地層である。
このシリーズは、この地層にそっと光を当て、
APLFを形づくる思想の基底に、ゆっくりと言葉を置いていくための試みである。

なぜ「深層」に触れるのか
人は、表面的な行動を変えるだけでは、生き方そのものは変わりにくい。
どれだけ習慣を整えても、どれほど丁寧に暮らしを積み重ねても、ある地点で行き詰まることがある。
その理由のひとつは、
生命や世界の“構造”がどのように成り立っているか という理解が抜け落ちたまま、
方法論だけを積み上げてしまうことにある。
生命は何によって動いているのか。
世界はどのように結ばれているのか。
予測できない未来に対して、どう姿勢をとるべきなのか。
身体はどのように世界を受け取り、関係性の中に位置づけられるのか。
こうした“根にあたる前提の部分”にふれると、
行動の意味や日々の選択が、静かに違う姿を見せはじめる。
ただし、深層に触れることは、6つの断面や7つの共通原則を理解するための前提ではない。
それらは深層を知らなくても、日常の中で十分に機能する。
深層は“必須の知識”ではなく、むしろ
世界を見るときの解像度をやわらかく高める光 のようなものだ。
深層の前提に少しだけ触れると、これらの言葉がどこから生まれ、どこへ向かうのかが、まったく違う輪郭で立ち上がり始める。
深層は、抽象的な哲学ではない
ここで扱う深層は、学問としての哲学ではない。
むしろ、誰もが日常の中でふと立ち止まったときに感じている、“まだ言葉になっていない感覚”に近い。
海辺の静けさの前で感じるもの。
偶然の出会いに救われた夜の手触り。
身体の力がふっと抜けた瞬間に訪れる余白。
旅先で風景に溶け込み、境界がほどけていく感覚。
それらの体験の底には、必ず生命の構造が息づいている。
深層シリーズは、そうした“生きる前提”にそっと光を当てていく試みである。
このシリーズで扱っていく主なテーマ
深層はひとつの概念ではなく、いくつもの地層が重なり合い、互いに響き合っている。
-
生命の成り立ち
── 動的平衡・矛盾性・揺らぎとしての生命 -
未来との関係
── 予測ではなく、応答としてひらかれる時間 -
関係性の地形
── 世界は網であり、居場所は関係の中に生まれる -
時間と一回性
── 積み上げではなく、「今ここ」で立ち上がる価値 -
身体・感覚・存在
── ゆるみ、気づき、「ただ在る」という現れ方
これらは7つの共通原則ともつながっているが、それとは別の“奥の層”に位置づけられる。
深層の理解が進むほど、共通原則は行動の言語として立体的に機能しはじめる。
深層シリーズがたどる流れ
深層シリーズは、ひとつの結論へ向かうための構成になっていない。
むしろ、生きる前提となる感覚を、いくつかの方向から照らしていく試みである。
はじめに触れるのは、生命そのものの構造。
揺らぎ、矛盾、動き続けることで保たれる存在としての生命観を見つめる。
そこから視点は、未来・関係性・時間へとひらいていく。
世界はどのようにつながり、
私たちは予測できない未来や一回きりの時間と、どう向き合っているのか。
さらに旅は、身体と感覚、存在の現れ方へと降りていく。
思考より先に動く身体、
気づきとして立ち上がる感覚、
「ただ在る」という静かな力。
最後に、これらの深層が、
6つの断面や7つの共通原則として、
どのように日常の実践へ立ち上がっているのかを振り返る。
深層は、行動の前にある「感覚の基底」である
深層シリーズは、How-to を教える場ではない。
行動の指南でも、技術の紹介でもない。
ここで扱うのは、行動の前にある“世界の感じ方”の部分である。
- 揺らぎをどう受け取るか
- 予測できなさとどう共にあるか
- 身体をどのように開くか
- 関係性をどのスケールで捉えるか
- どの範囲を「自分」と呼ぶか
こうした基底の感覚が変わると、努力していないのに、
日常の選択や行動が自然に変化しはじめる。
深層は、行為の手前にひろがる“静かな海”のような領域である。
深層シリーズの読み方
深層シリーズの各章は、特定の順番で読む必要はない。
どこから入ってもよく、どのテーマから触れてもかまわない。
それぞれの記事は独立しているが、ゆるやかに互いを照らし合う構造になっている。
まずは、どこかひとつの文章があなたの感覚の奥で響くかどうかを大切にしてほしい。
深層への最初の一歩
第1章では、深層の中でも中心にあるテーマ──
生命をどう捉えるか について触れている。
生命とは揺らぎそのものであり、矛盾を抱え、関係性の網の中で立ち上がる存在である。
深層への旅は、ここから始まる。
➝ 深層 #1|生命という揺らぎに触れる ── 動的平衡と矛盾性から見る生命観の起点
深層シリーズ 記事一覧
APLFを静かに支える「深層」のテーマを、序章から順にたどることができます。
- 深層シリーズ ── 生命観の土壌をめぐる探究
- 深層 #1|生命という揺らぎに触れる ── 動的平衡と矛盾性から見る生命観の起点
- 深層 #2|予測と驚きのあいだで生きる ── 未来は“計算”ではなく“応答”で開く
- 深層 #3|世界はつながりでできている ── ネットワーク構造と生命の地形
- 深層 #4|関係性の中で生きる ── スモールワールドと“ホーム”という生存戦略
- 深層 #5|時間の深層 ── 一回性が価値を形づくる理由
- 深層 #6|揺らぎのなかに立つ ── 不安定さを失わずに進むための感覚
- 深層 #7|身体知と世界観 ── ゆるみから立ち上がる“現れ方”
- 深層 #8|気づきの身体 ── 感覚が先に動き、思考があとを追う
- 深層 #9|存在をめぐる旅 ── 「ただ在る」という静かな力
- 深層 #10|境界のあいだで生きる ── 個と世界の「距離」に触れる
- 深層 #11|深層と実践 ── 共通原則と断面が“土壌から立ち上がる”とき
APLF全体の構造については、
「APLFの設計図」でまとめています。
➝ APLFの設計図